このページの要点
- 概要書面は契約を締結するまで(法42条1項)、契約書面は契約を締結したとき遅滞なく(同条2項)交付する。
- 契約書面には役務の種類・形態・数量の総計、対価の費目ごとの明細と合計、期間、解除の事項などを書き、クーリング・オフの記載は赤枠・赤字にする。
- 電磁的方法で提供するには、説明・確認・氏名と理解した旨の記入による承諾と、承諾を証する書面の交付が要る。
- 前払取引(5万円超)では、業務及び財産の状況の書類を事務所に備え、会員の閲覧請求に応じる(法45条)。
結論:契約の前に概要書面、契約のあとに契約書面。この二つは別の書面で、入会申込書では代わりにならない
特定継続的役務提供に当たる契約では、運営者は二つの書面を、時期を分けて会員に渡す義務があります。一つ目は、契約を締結するまでに渡す概要書面(特定商取引法42条1項)。二つ目は、契約を締結したときに遅滞なく渡す契約書面(同条2項)です。前者は、契約するかどうかを会員が判断するための書面、後者は、結んだ契約の内容を会員が確かめ、クーリング・オフの起算点にもなる書面です。
入会申込書は、会員が入会の意思と基本情報、希望の内容を書き込む書面で、運営者が会員に渡す書面ではありません。会員規約も、契約の中身を定めたものとして交付されるだけでは、法律が求める概要書面や契約書面の記載事項(施行規則92条、93条、94条)を満たすとは限りません。書面を、規約とは別に、決められた記載事項と体裁で用意し、いつ、どの方法で渡したかを記録できるようにしておく必要があります。
婚活サービスでは、特に二つの点で書面の設計が難しくなります。一つは、役務の数量(紹介の人数、お見合いの回数、面談の時間)を、書面にどう書くか。もう一つは、ウェブで申込みが完結する場合に、概要書面を契約より前に渡す順序をどう作るかです。このページは、この二点を中心に、書面の記載事項を条文に沿って確かめます。
書面が必要になるかどうかの判定そのものは、結婚相談所は特定継続的役務提供に当たるかで扱います。契約書面にクーリング・オフと中途解約の事項をどう書くかの中身はクーリング・オフと中途解約、対価の欄に費目をどう並べるかは入会金・月会費・お見合い料・成婚料の定め方と表示とあわせて読むと、書面と規約の食い違いを減らせます。
- 概要書面は契約を締結するまでに、契約書面は契約を締結したときに遅滞なく交付する。時期が違う別の書面である。
- 記載事項は施行規則で決まっている。赤枠・赤字の記載と、8ポイント以上の文字の指定もある。
- 電子メールやウェブ画面で渡す(電磁的方法による提供)ためには、会員の承諾が要り、承諾の取り方にも手順がある。
- 前払取引(5万円を超える金銭を役務に先立って受領)では、業務及び財産の状況を記載した書類を事務所に備え置き、会員の閲覧請求に応じる。
二つの書面は何が違うのか:時期、目的、クーリング・オフとの関係
概要書面と契約書面は、似た項目を含みますが、役割が異なります。概要書面は、契約の「予告」です。契約するかどうかの判断材料であり、金額は「概算額」で足ります。契約書面は、結ばれた契約の「確定した内容」です。金額は確定した額、費目ごとの明細とその合計を書きます。クーリング・オフの期間は、契約書面を受け取った日から8日で数えるので(法48条1項)、契約書面の交付の事実と日付が、会員にも運営者にも重要です。
概要書面と契約書面の違い
| 項目 | 概要書面 | 契約書面 |
|---|---|---|
| 根拠 | 法42条1項、施行規則92条 | 法42条2項、施行規則93条・94条 |
| 交付の時期 | 契約を締結するまで | 契約を締結したとき、遅滞なく |
| 役務の対価 | 金銭の「概算額」 | 費目ごとの明細とその合計(規則94条1項の表) |
| クーリング・オフの記載 | 解除に関する事項を記載(規則92条1項1号ト) | 解除に関する事項を、赤枠・赤字で記載(規則94条1項の表・3項) |
| 体裁の指定 | 書面の内容を十分に読むべき旨を、赤枠の中に赤字で記載(規則92条2項)。8ポイント以上の文字(同条3項) | 同旨(規則94条4項・5項)。クーリング・オフに関する事項などは赤枠・赤字(同条3項) |
| 起算点としての意味 | クーリング・オフの起算点にはならない | 受領した日から8日の起算点(法48条1項) |
| 備考 | 契約の前に、会員が内容を確かめる機会を作る | 契約の締結を担当した者の氏名、契約の締結の年月日なども記載(規則93条2項) |
表のとおり、どちらも運営者が「一枚の書面」を用意するだけでは足りません。概要書面を契約前に渡し、その後、契約を結んだときに契約書面を渡す、という二段階の運用を、書類の作成と運用の手順に組み込みます。実務では、申込みの前に概要書面を渡し、申込書に署名をもらった後に契約書面を渡す、という運びにすることが多いですが、書類の名前や形式が決まっているわけではありません。重要なのは、それぞれが記載事項を満たし、渡した時期を証明できることです。
概要書面の記載事項:施行規則92条を、婚活サービスに当てはめる
施行規則92条1項1号は、特定継続的役務提供契約についての概要書面に明記すべき事項を、イからルまで列挙しています。次の表は、その主な項目を、婚活サービスに当てはめたときの書き方の観点とあわせて整理したものです。
概要書面の記載事項(施行規則92条1項1号)と婚活サービスでの書き方
| 記載事項 | 条文の内容 | 婚活サービスでの書き方の観点 |
|---|---|---|
| 事業者の情報(イ) | 氏名または名称、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名 | 契約の当事者となる主体を書く。本部の名称が残らないよう確認する |
| 提供される役務の内容(ロ) | 提供される役務の内容 | 紹介の方法(担当者による紹介か、システムの提示か)、助言の有無、お見合いの設定の範囲を書く |
| 購入が必要な商品(ハ) | 役務の提供に際し、会員が購入する必要のある商品があればその商品名、種類、数量 | 装身具など、購入が必要な商品があるなら書く。ないなら、ないことを明確にしておく |
| 対価の概算額(ニ) | 役務の対価その他会員が支払う金銭の概算額 | 入会金、登録料、月会費、活動費などの名目別の概算を書く |
| 支払の時期と方法(ホ) | ニの金銭の支払の時期及び方法 | 一括・分割・月払い、口座振替、クレジットなどを区別して書く |
| 役務の提供期間(ヘ) | 役務の提供期間 | 更新がある場合の期間の書き方を、契約書面と揃える |
| クーリング・オフ(ト) | 法48条1項の解除に関する事項(同条2項〜7項に関する事項を含む) | 8日間、書面または電磁的記録、通知を発した時に効力が生じる等 |
| 中途解約(チ) | 法49条1項の解除に関する事項(同条2項、5項、6項に関する事項を含む) | 精算額の上限(提供された役務の対価+通常生ずる損害の額)の説明 |
| クレジット等(リ) | 割賦販売法のローン提携販売・包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせんの方法で提供する場合の、事由の対抗に関する事項 | クレジットや分割払いを使う場合に限り記載 |
| 前受金の保全(ヌ) | 前払取引を行うときは、前受金について保全措置を講じているか否か、講じていればその内容 | 保全措置を講じていない場合も、「講じていない」旨を書く |
| 特約(ル) | 特約があるときはその内容 | 規約にしかない特別の定めがあれば、概要書面にも記載する |
表の中で、実務で抜けやすいのが、ヌ(前受金の保全措置)とル(特約)です。保全措置の記載は、「講じているか否か」を書く義務であって、保全措置を講じる義務そのものを定める規定ではありません。講じていないなら、その旨を書きます。また特約は、規約の中にだけ置いて、概要書面に書かないと、会員が契約前に知る機会が奪われることになります。規約にある、他の会員への情報の提供、成婚料の特別な条件、休会の費用などが特約に当たるかどうかは、個別に判断することになりますが、迷ったら概要書面にも書いておく運用が穏当です。
体裁のルールも条文にあります。概要書面には、書面の内容を十分に読むべき旨を、赤枠の中に赤字で記載します(規則92条2項)。日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用います(同条3項)。ウェブ画面で見せる形にしても、これらの趣旨を満たす表示にすることが前提です。
契約書面の記載事項:数量の総計、担当者、明細と合計を書く
契約書面の記載事項は、法42条2項の各号に、役務の内容、対価、支払の時期と方法、提供期間、クーリング・オフ、中途解約が並び、7号で主務省令に委ねられた事項が加わります。施行規則93条1項は、1号の役務の内容として、役務の種類、役務提供の形態または方法、役務を提供する時間数、回数その他の数量の総計、役務を直接提供する者の資格、能力等に関して特約があるときはその内容、を定めています。同条2項は、7号の事項として、事業者の氏名・名称・住所・電話番号、契約の締結を担当した者の氏名、契約の締結の年月日などを挙げています。
契約書面の記載事項(条文を確認したもの)
- 法 42条2項1号、規則 93条1項役務の内容
役務の種類、提供の形態または方法、時間数・回数その他の数量の総計、役務を直接提供する者の資格・能力等に関する特約。購入が必要な商品があればその商品名。
- 法 42条2項2号、規則 94条1項の表対価
入学金、入会金、授業料その他の役務の対価、施設整備費、検定料、購入が必要な商品の価格その他の費目ごとの明細とその合計。
- 法 42条2項3号・4号支払時期・方法と提供期間
金銭の支払の時期と方法。役務の提供期間。
- 法 42条2項5号・6号、規則 94条クーリング・オフと中途解約
書面を受領した日から8日、書面または電磁的記録、通知を発した時に効力が生じること、損害賠償や違約金が請求できないこと、金銭の返還など。8日経過後の中途解約と、請求できる額の上限、精算の方法。
- 規則 93条2項その他
事業者の氏名・名称・住所・電話番号、契約の締結を担当した者の氏名、契約の締結の年月日、購入が必要な商品の種類・数量、前受金の保全措置、特約。
クーリング・オフに関する事項(表の第二号の下欄)と、関連商品を使用・消費したときは解除できないとする場合のその内容は、赤枠の中に赤字で記載します(規則94条3項)。書面の内容を十分に読むべき旨も赤枠の中に赤字で記載し(同条4項)、8ポイント以上の文字を用います(同条5項)。
婚活サービスで書き方に迷うのは、「回数その他の数量の総計」です。仲人型なら、紹介する人数、お見合いを設定する回数、担当者との面談の回数や時間が、ここに該当します。「無制限」と書きたくなる場面もありますが、実際の運営では、紹介の人数に上限があったり、休会中は紹介が止まったりするなど、条件が付きます。条件を書かずに「無制限」と書くと、後から「約束した数量に足りない」と言われます。反対に、上限を数字で書けば、会員が何をいくらで受けられるかが明確になり、運営者自身の運用も整理されます。
データマッチング型でも、毎月の提示件数や申込みの上限、提示のための検索条件の変更回数などは、役務の数量にあたり得ます。アプリ型で、運営者による紹介を付けるプランがあるなら、そのプランの数量を別に書きます。また、役務を直接提供する者(カウンセラー、仲人)の資格や能力に関して特約を置くなら(「有資格者が担当します」など)、その内容を記載する必要があります。広告に書いた資格や経歴の表現と、契約書面の特約の記載を一致させておきます。
書き方の例(一般的な例) 契約書面の数量・期間の書き方
紹介の数量
理由数量の総計は記載事項。随時・無制限の表現は、数量が特定されず、期待と実際のずれの原因になる
提供期間
理由提供期間は記載事項であり、判定の要件でもある。更新の条項は、概要書面・契約書面・規約で一致させる
対価
理由費目ごとの明細とその合計が記載事項(規則94条1項の表)。名目が混ざっていると、何の対価かが特定できない
電子交付:承諾の取り方と、オンライン完結の申込みの順序
概要書面と契約書面は、書面の交付に代えて、会員の承諾を得て、電子メールやウェブ画面など電磁的方法で提供することができます。この場合、書面を交付したものとみなされます(法42条4項)。ただし、承諾の取り方には手順が決まっています。令26条1項は、承諾を、運営者があらかじめ、電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面等によって得ると定めます。施行規則99条1項は、承諾を得る際に運営者が説明すべき事項を挙げています。
電磁的方法で書面を提供するときの、承諾から提供までの流れ(施行令26条、施行規則97〜101条)
- 電磁的方法の種類と内容を示す運営者が使う方法(電子メール、ウェブ画面など)と、ファイルへの記録の方式を示す(令26条1項、規則98条)。
- 会員に説明する説明と確認を受けたうえで承諾しなければ書面が交付されること、提供される事項は書面に記載すべき重要な事項であること、電磁的方法で提供した場合、記録された日から8日を経過するとクーリング・オフができなくなること、一定の電子計算機を日常的に使い自ら操作できる人に限り提供を受けられること、を平易な表現で説明する(規則99条1項・2項)。
- 操作できることなどを確認する会員が閲覧のための操作を自ら行えるか、電子計算機を日常的に使っているか、サイバーセキュリティを確保しているか、他の人にも送信を求めるか、を確認する。確認は、会員が日常的に使う電子計算機を自ら操作して行う方法による(規則99条3項・4項)。
- 承諾を得る会員が氏名と、説明の内容を理解した旨を記入することにより承諾を得る。記号の記入など、認識が明らかにならない方法は使わない(規則99条5項)。
- 承諾を証する書面を交付する電磁的方法による提供を行うまでに、承諾を得たことを証する書面を交付する(規則99条7項)。一定の場合は、この書面も電磁的方法で提供できる(同条8項)。
- 提供する・到達を確認する会員が出力して書面にでき、改変の有無を確認できる措置を講じた方法で提供する(規則97条2項)。契約書面等の事項がファイルに記録され、閲覧できるか否かを確認する(令26条3項、規則101条)。
契約書面等を電磁的方法で提供した場合、会員の使用に係る電子計算機のファイルに記録された時に到達したものとみなされます(法42条5項)。ただし、電磁的記録媒体を交付する方法は、この到達みなしの対象から除かれます(規則102条)。
婚活サービスでウェブ完結の申込みを設計するときは、次の順序を意識します。承諾の取得(説明と確認)→ 概要書面の提供 → 会員が内容を確かめる時間 → 申込み → 運営者の承諾 → 契約書面の提供 → 到達の確認。この順序で作らないと、「申込みボタンの先に概要書面が出る」という逆転が生じ、概要書面を契約を締結するまでに渡す義務(法42条1項)を満たせません。申込み画面の「規約に同意する」というチェックを押した時点で、承諾が得られたと扱うこともできません。氏名と理解した旨の記入が求められているからです(規則99条5項)。
電子交付の運用で見落とされやすいのが、承諾を拒否した会員への対応です。令26条2項は、いったん承諾を得ても、会員が書面等により電磁的方法による提供を受けない旨を申し出たときは、電磁的方法による提供をしてはならない、と定めています。そのため、書面(紙)で交付する手段も、運営者は用意しておく必要があります。
前払取引の書類の備付けと、会員の閲覧請求
特定継続的役務提供に係る前払取引とは、役務の提供に先立って、相手方から政令で定める金額を超える金銭を受領する取引です(法45条1項)。政令で定める金額は5万円です(施行令27条)。この前払取引を行う運営者は、主務省令で定めるところにより、その業務及び財産の状況を記載した書類を、特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければなりません(法45条1項)。そして、前払取引の相手方(会員)は、この書類の閲覧を求め、または運営者の定める費用を支払ってその謄本もしくは抄本の交付を求めることができます(同条2項)。
婚活サービスでは、入会金と数か月分の会費を入会時に一括で受領する設計が多く、前払取引に該当する場面が少なくありません。受領した金額が、役務の提供に先立つものか、毎月の提供と同時に受け取る月払いかによって、該当の有無が分かれます。備え置く書類は、施行規則105条1項で、貸借対照表、損益計算書及び事業報告書(会社以外の者にあっては、これらに準ずる書類)とされています。同条2項は、事業年度ごとに事業年度経過後3月以内に作成し、事務所に遅滞なく備え置くことを、同条3項は、備え置いた日から起算して3年を経過する日までの間、保管することを定めています。閲覧の求めに応じる窓口と手続(受付の方法、費用、謄本の交付)も、あらかじめ決めておきます。
概要書面・契約書面の記載事項のうち、前受金の保全措置を講じているか否か、講じていればその内容(規則92条1項1号ヌ、93条2項6号)も、前払取引と関わる項目です。保全措置を講じる義務そのものを、この条文が定めているわけではありませんが、講じているか否かを会員に明示することが求められます。
前払取引の書類と並んで、運営者の側で整えておきたいのが、書面を渡した事実の記録です。クーリング・オフの起算点は、契約書面を受領した日から8日です(法48条1項)。会員が書面を受け取った日が争いになると、クーリング・オフの期間が過ぎたのかどうかを証明できません。対面で渡すなら、受領の日付と署名を書面の控えに残す、郵送するなら送付の記録を残す、電磁的方法で提供するなら、ファイルに記録された日と、記録の確認(令26条3項、規則101条)の記録を残す、といった運用が必要です。
記録の保存期間は、条文で一律に決まっているわけではありませんが、会員との契約が続く間と、解約後に争いが生じ得る期間は保存しておくのが現実的です。会員の個人情報を含む書類なので、保存する場所とアクセスできる人の範囲も、プライバシーポリシーの内容と整合させます(会員情報・プロフィール・写真の個人情報)。
書き方の例書面の交付と電磁的方法による提供
- 当社は、会員が本契約を締結するまでに、契約の概要を記載した書面(以下「概要書面」)を会員に交付します。
- 当社は、本契約を締結したときは、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面(以下「契約書面」)を会員に交付します。
- 当社は、会員の承諾を得た場合に限り、前二項の書面の交付に代えて、電子メールその他の電磁的方法によりこれらの書面に記載すべき事項を提供します。会員は、いつでも、書面による交付を求めることができます。
- 概要書面及び契約書面の内容と本規約の内容が異なるときは、会員に有利な内容を適用します。
第3項の「いつでも書面による交付を求めることができる」という書き方は、施行令26条2項(電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは電磁的方法で提供してはならない)に沿った整理です。第4項は書類の優先関係の一例で、会員に有利な内容を適用するという定め方は、食い違いの解釈の争いを減らす効果があります。
書面と規約が食い違ったとき:点検の問いと、起きがちなこと
書面が複数になると、書面の間、書面と規約の間で記載が食い違うことがあります。会員から見れば、運営者から渡された書面はすべて「契約の内容」であり、どれが優先するかは区別できません。運営者側は、書面を作る前に、次の問いで食い違いの芽を摘みます。
確認の問いと理由書面を作る前・渡す前に自分に聞く問い
概要書面に書いた概算額と、契約書面に書く確定額の差は、説明がつくか。
概算額と確定額が大きく違うと、契約前の説明と異なる契約になる。差が出る理由(オプションの選択など)を概要書面にも書いておく。
契約書面のクーリング・オフの記載は、赤枠・赤字になっているか。
規則94条3項の体裁の指定。ウェブ画面でも、同じ趣旨が分かる表示にする。
紹介の人数・回数の総計は、契約書面と規約で同じ数字か。
規約にだけ上限が書かれ、書面には「随時」とあると、会員は書面の表現を信じる。
電磁的方法で提供する場合、承諾の記録と、承諾を証する書面を残しているか。
承諾の手順(説明、確認、氏名と理解した旨の記入)を満たしていないと、書面を交付したとみなされない可能性がある。
書面を渡した日と方法を、あとで証明できるか。
クーリング・オフの起算日(書面を受領した日)が争いになる。交付の日付の記録と、受領の確認を残す。
起きがちなこと
場面別・書面の整備で起きがちなこと
- 申込書を契約書面にしてしまう:入会申込書の写しを会員に渡して契約書面を交付したと扱うと、必要な記載事項が足りないことがある。
- 概要書面が契約と同時になる:ウェブの申込み画面の最後に概要書面を表示し、確認ボタンを押せばそのまま契約が成立する設計は、契約前に内容を確かめる機会が実質的にない形になりやすい。
- 数量が「無制限」「随時」になる:紹介の人数・回数が書面に書かれないと、会員の期待と実際の運用がずれやすい。
- 電子交付の承諾が形式だけになる:規約の同意チェックを承諾とみなし、説明と確認、氏名と理解した旨の記入の手順を踏まない運用になりやすい。
- 書類の備付けを忘れる:入会時に数か月分の会費を一括で受け取る設計なのに、前払取引の書類を事務所に備え置いていないことがある。
- 書面の当事者欄が本部のまま:加盟店が契約の当事者なのに、書面の事業者欄が本部の名義のままだと、苦情や解約の窓口が分からなくなる。
よくあるご質問
入会申込書を渡せば、契約書面を交付したことになりますか。
申込書の内容が、法42条2項と施行規則93条・94条に定める記載事項(役務の種類、提供の形態、数量の総計、対価の費目ごとの明細と合計、支払の時期と方法、提供期間、クーリング・オフと中途解約の事項、赤枠・赤字の体裁など)をすべて満たしていれば、書面として成り立つ余地はあります。ただし、会員が記入して提出する申込書と、運営者が契約を締結したときに交付する契約書面は、役割が違うので、実際には別の書面として用意するほうが記載事項を確認しやすくなります。
概要書面は、いつまでに渡せばよいですか。
契約を締結するまでに交付する必要があります(特定商取引法42条1項)。ウェブで申込みが完結する設計では、申込みボタンの前に、概要書面を提供し、会員が内容を確かめられる状態にします。申込みの最後の画面で概要書面を表示して、そのまま契約を成立させる設計は、契約前に確かめる機会を作ったことにならない可能性があります。
契約書面をメールで送ってもよいですか。
会員の承諾を得れば、電磁的方法による提供ができます(法42条4項)。承諾は、電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面等によって得ます(施行令26条1項)。説明と確認を行い、会員が氏名と理解した旨を記入することで承諾を得て、承諾を証する書面を交付します(施行規則99条)。規約への同意のチェックだけでは足りません。会員が電磁的方法による提供を受けない旨を申し出たときは、書面で交付します(施行令26条2項)。
「前払取引」の書類は、どこに備えればよいですか。
特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に、業務及び財産の状況を記載した書類を備え置きます(特定商取引法45条1項)。前払取引とは、役務の提供に先立って5万円を超える金銭を受領する取引です(施行令27条)。会員は、書類の閲覧を求め、費用を支払って謄本または抄本の交付を求めることができます(同条2項)。備え置く書類は、貸借対照表、損益計算書及び事業報告書(会社以外の者にあっては、これらに準ずる書類)で、事業年度経過後3月以内に作成して備え置き、3年を経過する日までの間保管します(施行規則105条)。
概要書面と契約書面の内容が食い違ったときは、どうなりますか。
条文に、どちらが優先するかの定めはありません。会員から見ると、運営者から渡された書面はすべて契約の内容として受け取られ、食い違いは、運営者に不利に解釈されやすくなります。規約に書類の優先関係を定めることは有効な整理ですが、食い違いそのものをなくす点検が先です。概算額と確定額の差、数量の総計、提供期間、クーリング・オフの記載を、書面を渡す前に照合します。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、サービスの仕組みや契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 警察庁