このページの要点
- クーリング・オフは、契約書面を受領した日から起算して8日。書面または電磁的記録で、通知を発した時に効力が生じ、対価も損害賠償も請求できない(特商法48条)。
- 8日後も、会員はいつでも将来に向かって解除できる。請求できるのは提供済みの対価と、2万円または契約残額の20%の低いほう、開始前は3万円まで(特商法49条、別表第四の7の項)。
- 結婚相手紹介の関連商品は真珠・貴石・半貴石・指輪その他の装身具。販売契約も解除でき、使用を理由とする例外は条文の構造上想定されていない。
- 「中途解約不可」「返金しない」の特約は無効。算式で精算する条項と、返金時期・通知方法を書面と規約で揃える。
結論:解約の話は、条文が決めている三つの場面に分けて書く
結婚相談所の入会契約が、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たるときは、会員が契約をやめる場面について、規約より先に法律が数字を決めています。契約を結んだあとの解約は、次の三つの場面に分けて考えると、規約の条項も、会員への説明も整理しやすくなります。
解約の三つの場面(時間の流れ)
- 契約書面を受け取ってから8日間:クーリング・オフ会員は理由を問わず、無条件で契約を解除できます。すでに紹介を受けていても、対価を請求できません。損害賠償や違約金も請求できません(特商法48条)。
- 8日が過ぎたあと:中途解約会員は、契約期間の途中でも、いつでも、将来に向かって契約を解除できます。ただし、運営者が請求できる金額には上限があります(特商法49条)。
- 契約が終わるとき:退会・成婚退会・期間満了会員の都合による解約でなく、契約の目的を果たした終了や期間満了です。成婚料や成婚退会の定め方は成婚と成婚料・成婚退会の定め方で扱います。
この3場面のうち、前の二つは法律が決めており、規約で会員に不利な方向へ変えることはできません。規約が自由に書けるのは、その外側の部分です。
このページは、「結婚を希望する者への異性の紹介」が特定継続的役務に当たることを前提に、前の二つの場面の中身と、そこに規約の条項をどう合わせるかを説明します。そもそも自分の入会契約が特定継続的役務提供に当たるのか(契約期間が2か月を超え、支払う金額が5万円を超えるか)は、結婚相談所は特定継続的役務提供に当たるかで判定の順序を説明しています。当たらない契約には、このページの数字は直接は働きません。その場合の「返金しない」といった条項の評価は、最後の節で消費者契約法の面から触れます。
条文は、特定商取引に関する法律(以下「特商法」)、同法施行令(以下「施行令」)、同法施行規則(以下「施行規則」)、消費者契約法を、e-Gov法令検索(法令API)で確認した現行の規定に基づきます。数字は条文の定めをそのまま書き、個別の契約の金額は例として仮の数字を使います。
クーリング・オフ:契約書面を受け取った日から8日間
クーリング・オフは、一度結んだ契約を、会員が理由を示さずに解除できる制度です。特商法48条1項は、会員が契約書面(42条2項の書面)を受領した日から起算して8日を経過するまで、書面または電磁的記録によって契約を解除できると定めています。ここで規約を書く人が押さえておくことは、次の四点です。
特商法48条(クーリング・オフ)の要点
- 特商法48条1項期間と方法
契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまで、書面または電磁的記録で解除できる。電磁的記録とは、電子メールなど記録が残る方法をいう。
- 特商法48条3項効力の発生
解除を行う旨の通知を発した時に効力が生じる。運営者に届いた日ではなく、会員が発信した日が基準になる。
- 特商法48条4項損害賠償・違約金の禁止
運営者は、解除に伴う損害賠償や違約金を請求できない。
- 特商法48条6項提供済みの役務の対価
解除があれば、すでに紹介などの役務が提供されていても、対価その他の金銭の支払を請求できない。
- 特商法48条7項受領済みの金銭の返還
解除があったときは、契約に関連して受け取った金銭を、速やかに返還しなければならない。
- 特商法48条8項不利な特約は無効
以上の規定に反する特約で、会員に不利なものは無効となる。
条の番号は、e-Gov法令検索(法令API)で、現行の規定の項番号まで確認したものです。
第一に、起算日は「契約書面を受領した日」です。申込書に署名した日でも、入金した日でも、紹介を受け始めた日でもありません。契約書面を交付していない、または交付した書面に法定の事項が欠けているときは、8日の数え始めが定まらず、期間が進んでいないと扱われる場面が出てきます。どの程度の記載漏れがその扱いになるかは個別の事情によるため、書面の記載事項は、概要書面・契約書面と書類の備付けの説明に沿って、漏れなく整えておくことが先決です。日数の数え方は、条文が「受領した日から起算して八日」と書いているので、規約や案内文にも「契約書面を受領した日から起算して8日」と条文どおりに書き、受領日を数えに入れる扱いであることを添えておくと誤解が生じにくくなります。
第二に、通知の方法は書面または電磁的記録です。規約で「解除は書面(郵送)に限る」と書くと、電磁的記録による解除を排除する点で会員に不利な特約となり、効力が認められません(48条8項)。電子メールや問い合わせフォームからの通知も、記録が残るものは電磁的記録に当たります。受付方法は「書面または電子メールなどの電磁的記録で、次の宛先へ」と、広めに書いておくのが安全です。
第三に、効力は「通知を発した時」に生じます。運営者の手元に届くのが8日目を過ぎていても、8日以内に発信されていれば有効です。そのため、規約に「当社に到達した日をもって解除の効力が生じる」と書くと、法定の効力発生時期より会員に不利になり、その部分は特約として無効になります。発信の日が分かるよう、消印や送信記録を保存するのが会員にも運営者にも有益だ、と案内する程度にとどめます。
第四に、不実の告知や威迫で解除を妨げたときは、8日の数え方が変わります。48条1項のかっこ書きは、運営者が解除に関する事項について不実のことを告げ、または会員を威迫して困惑させ、そのために会員が期間内に解除できなかったときは、運営者が主務省令に従ってクーリング・オフができる旨を記載して交付した書面を会員が受領した日から、改めて8日を数えると定めています。施行規則109条は、その書面に、契約の内容、金額、8日を経過するまで書面または電磁的記録で解除できること、48条2項から7項までの規定に関する事項などを書くこと、8ポイント以上の大きさの文字を使うこと、解除できる旨などを赤枠の中に赤字で書くこと、書面を渡した際に会員がそれを見ていることを確認して内容を告げることを定めています。
クーリング・オフのあとに残る処理:返金・関連商品・規約の書き方
クーリング・オフが行われたときの処理は、48条の各項が細かく決めています。規約には、これを会員に分かる言葉で並べておくと、実際に通知が来たときに迷いません。
確認の問いと理由クーリング・オフの通知が来たときの確認項目
通知は8日以内に発信されたか
48条3項は発信時に効力が生じるとしています。到達が遅れても、発信日が期間内なら有効です。消印、送信日時、通知書面の日付で判断します。
契約書面はいつ受領されたか
起算日は契約書面の受領日です。交付の方法(郵送、手渡し、電子的な提供)と、その日が確認できる記録を確認します。
すでに受けた紹介の対価を請求していないか
48条6項により、役務が提供されていても対価を請求できません。お見合いを済ませていても同じです。
受け取った金銭を返す手配をしたか
48条7項は速やかな返還を求めています。入会金、登録料、月会費、お見合い料など、契約に関連して受領した金銭が対象です。
関連商品を売っていないか
48条2項により、関連商品の販売契約も解除できます。結婚相手紹介では、真珠、貴石、半貴石、指輪その他の装身具が関連商品として政令に挙がっています(施行令29条、別表第五の5号)。
この五点は、クーリング・オフの通知を受けたときの確認の順序であり、判断は契約の中身と事実によります。
関連商品について補足します。48条2項は、運営者が特定継続的役務の提供に際し会員が購入する必要のある商品として政令で定める商品(関連商品)の販売や、その代理・媒介を行っているときは、その販売契約についても、同じようにクーリング・オフができると定めています。施行令29条は、関連商品を別表第五に掲げる商品とし、別表第五の5号が、結婚を希望する者への異性の紹介(別表第四の7の項)の関連商品として、真珠並びに貴石及び半貴石、指輪その他の装身具を挙げています。婚活サービスで、入会記念の装身具や、プロフィール撮影の衣装などを販売する運営を考えている場合は、それが「会員が購入する必要のある」商品に当たるかを先に整理します。当たるときは、その販売契約も、役務の契約と同じ日程で解除できる前提で、返品と返金の手順を書きます。
48条2項ただし書は、関連商品のうち、使用や一部の消費で価額が著しく減少するおそれがあるものとして政令で定めるものを使用または消費したときは、クーリング・オフの対象から外れる場合があると定めています。施行令29条2項は、そのただし書の対象を、別表第五の1号イ及びロ並びに2号に掲げる商品(美容関係の役務の関連商品)に限っています。別表第五の5号の装身具は、その対象に挙がっていません。つまり、この条文の構造から読む限り、結婚相手紹介の関連商品について、使用や消費を理由にクーリング・オフを断る定めを置くことは、そもそも想定されていないと考えて書くのが安全です。
なお、規約には、クーリング・オフを案内する条項を置き、同じ内容を契約書面に赤枠で載せる運用が一般的です。赤枠の内容と規約の条項が食い違うと、会員への説明が二重になり、どちらが優先するのかという争いの種になります。書面と規約の優先関係と内容の揃え方は、結婚相談所・婚活サービスの規約と書類の書類の地図も参考にしてください。
中途解約:8日が過ぎたあとも、いつでも将来に向かって解除できる
クーリング・オフの8日が過ぎると、会員は契約を取り消せなくなるのかというと、そうではありません。特商法49条1項は、契約書面を受領した日から8日を経過したあとは、特定継続的役務提供契約を、将来に向かって解除できると定めています。「いつでも」「理由を問わず」できるという点と、「将来に向かって」、つまり過去に遡らず、これから先の分だけを終わらせる点が特徴です。
この中途解約の権利には、運営者が規約で別の扱いを定めることができません。49条7項は、前各項の規定に反する特約で会員に不利なものは無効と定めています。実務でよく見られる次のような条項は、特定継続的役務提供に当たる契約では、そのままでは効力が認められません。
- 「入会後は、いかなる理由があっても中途で解約できない」
- 「契約期間の途中で退会するときは、残りの期間の会費の全額を支払う」
- 「一度支払った会費・入会金は、理由を問わず返金しない」
- 「解約は、解約希望月の○か月前までに申し出ること。それより遅れた場合は、その分の会費を支払う」(申出期限そのものを置けないわけではありませんが、期限に遅れた分を法定の上限を超えて請求する形は無効となり得ます)
逆に、運営者に認められているのは、「提供した分の対価」と「法定の上限額の範囲での精算額」を受け取ることです。この上限の計算が、規約を書く人にとって最も数字が絡む部分なので、次の節で順に見ます。
もう一つ押さえておくことがあります。48条1項のかっこ書きに当たる場合(不実の告知や威迫のため期間内に解除できなかった場合)は、前の節で見たとおり、クーリング・オフの8日が改めて数えられます。49条1項も同じ構造で、運営者が主務省令で定める書面(施行規則109条)を渡していないうちは、その会員は、8日を経過した後の中途解約の段階に入っていないと扱われる余地があります。説明の記録や、勧誘のときの言い方を社内で管理しておくことは、条文の面からも意味があります。不実の告知や威迫の禁止は特商法44条です(違反の罰則は成婚と成婚料・成婚退会の定め方で整理しています)。
精算額の上限を計算する:別表第四の7の項の数字
中途解約のとき、運営者が請求できる金額の上限は、特商法49条2項と、施行令30条・31条、別表第四が決めています。まず、条文の構造を整理します。
中途解約の精算額(特商法49条2項)
- 特商法49条2項1号提供開始後の解約
次のイとロを足した額に、法定利率による遅延損害金を加えた額が上限。イ=すでに提供された役務の対価に相当する額。ロ=解除によって通常生ずる損害の額として政令で定める額。
- 特商法49条2項2号提供開始前の解約
契約の締結および履行のために通常要する費用の額として政令で定める額が上限(遅延損害金を加えた額)。
- 施行令30条・31条政令で定める額
別表第四の第一欄の役務ごとに、第三欄の額(開始後のロ)、第四欄の額(開始前)とする。
- 施行令別表第四の7の項結婚を希望する者への異性の紹介
期間は二月。開始後のロは「二万円又は契約残額の二十パーセントに相当する額のいずれか低い額」。開始前は三万円。
ここでいう「契約残額」は、別表第四の1の項の欄に定義があり、特定継続的役務の対価の総額から、提供された特定継続的役務の対価に相当する額を引いた額をいいます。つまり、まだ受けていない分の対価の額です。7の項では、その契約残額の20パーセントと2万円を比べて、低いほうが「通常生ずる損害の額」になります。
計算の流れを、仮の数字で示します。数字は条文の理解のための例で、実際の料金の目安ではありません。
提供開始後に中途解約したとき(例1)
この例では、会員が受け取っていない20万円分のうち、運営者が請求できるのは2万円だけです。残りの約定の対価は、請求できません。
契約残額が小さいとき(例2)
契約が終わりに近いほど、ロは小さくなります。上限は、2万円ではなく契約残額の20パーセントで頭打ちになります。
提供開始前に解約したとき(例3)
開始前に、入会金や登録料の名目で3万円を超える額を「返金しない」と定めている場合、その超える部分は、上限を超える請求として効力が認められないおそれがあります。
計算にあたって、規約を書く人が注意するのは、次の三点です。
一つ目は「提供された役務の対価に相当する額」の出し方です。条文は「相当する額」と書くだけで、算出方法を示していません。結婚相手紹介では、期間の経過に応じて按分するのか、紹介を受けた回数に応じて按分するのか、お見合いの実施回数で数えるのかが、契約によって違います。契約書面に、対価の内訳と、提供済みの分の算出方法を書いておかないと、解約のたびに会員と運営者の計算が食い違います。算出方法は、実際の役務の提供の仕方に合ったものを一つに決めて書きます。
二つ目は「開始前」と「開始後」の区切りです。7の項の数字は、開始前なら3万円、開始後なら「提供済みの対価+ロ」と、区切りで構造が変わります。何をもって役務の提供の開始とするのかは、契約の内容と実際の提供の仕方で判断されます。活動の開始日、最初の紹介の提供日、最初のお見合いの設定日など、規約で区切りの日を決めて明示し、実際の運営もそれに合わせておきます。
三つ目は「対価の総額」に何が入るかです。入会金、登録料、システム利用料、月会費、お見合い料、成婚料などのうち、どれが特定継続的役務の対価に当たり、契約残額の計算にどう入れるかは、名目でなく実質で判断されます。条文だけでは決まらず、所管官庁の解釈を確認する必要があります。このガイドでは、断定せず、契約の費用の名目ごとに、何の対価かを契約書面で書き分けることを勧めるにとどめます(入会金・月会費・お見合い料・成婚料の定め方と表示参照)。
なお、50条2項は、特定継続的役務または関連商品を割賦販売により提供・販売するものについて、49条2項、4項、6項の規定を適用しないと定めています。分割払いを使う契約では、精算額の上限は別の法律(割賦販売法)の規定で定まる場面があります。分割払いやクレジットを使う運営では、この点を別途確認します。
婚活ならではの場面:仮交際、成婚前、休会、お見合い料
結婚相談所の解約には、他の習い事や教室にはない場面があります。条文の枠組みは同じでも、規約で場面ごとの扱いを決めておかないと、精算の計算が毎回揃いません。
場面ごとの精算の考え方
| 場面 | 起きること | 精算で確かめる点 |
|---|---|---|
| 契約書面を受け取った日から8日以内に、まだ活動を始めていない | クーリング・オフ。会員は理由なく解除できる | 受け取った金銭は全額返還。提供の有無にかかわらず対価の請求なし(48条6項・7項) |
| 8日以内だが、すでにお見合いを何回か設定した | クーリング・オフは有効 | 設定済みの分の対価も請求できない。お見合い料を別払いにしている場合も返還が必要 |
| 8日経過後、活動の開始前に解約する | 中途解約(開始前) | 留保できるのは3万円までの、契約の締結および履行のために通常要する費用 |
| 仮交際に入ったあと、会員が活動をやめたいと言う | 中途解約(開始後) | 提供済みの対価+ロ(2万円と契約残額の20パーセントの低いほう)まで |
| 真剣交際に進んだあと、成婚に至らず解約する | 中途解約(開始後) | 成婚料は発生しない前提でよいか、規約の成婚の定義で確認。残額の精算は同じ枠組み |
| 休会を挟んで、再開前に解約する | 休会中は提供がない。中途解約の計算で提供済みの範囲をどう数えるか | 休会期間の費用と、休会が契約期間にどう影響するかを規約と書面で一致させる |
仮交際と真剣交際は、結婚相談所の運営でよく使われる区別です。ただ、法律上の用語ではなく、規約でどう定義するかは運営ごとに違います。解約の精算には、「提供済みの役務」の範囲が関わるため、仮交際・真剣交際のどの段階が、役務としてどこまで提供された状態なのかを、規約で説明できるようにしておきます。
お見合い料を一回ごとに別払いにする運営では、次の点を決めておくと整理がつきます。お見合い料が、入会時の契約の対価に含まれるのか、契約とは別の個別の取引なのか。解約の時点でまだ実施していないお見合いの料金は、前払いなら返還の対象に入れるのか。どちらの扱いかは、契約書面の対価と支払時期・方法の記載に表れるので、書面を作る段階で決めておきます。
「成婚の見込みがないときは、運営者の判断で契約を終了させる」という、運営者側からの終了を定める条項も、婚活では珍しくありません。これは会員の解約権の制限ではないものの、終了時の返金額の定めが、会員の中途解約のときより不利になっていないかを確認します。運営者から終了するときに、会員が解約するときよりも返金額が少なくなるような定めは、公平性の面で問題になりやすく、消費者契約法10条の観点からも見直しが望ましいところです。
「返金しない」条項と、解約条項の整え方
多くの会員制サービスの規約には、「いかなる理由があっても返金しない」「入会金・会費は返金の対象としない」といった条項が見られます。特定継続的役務提供に当たる契約では、すでに見たとおり、49条7項がこの種の特約を無効としており、48条8項もクーリング・オフに反する特約を無効としています。
特定継続的役務提供に当たらない契約(期間が2か月以内、または金額が5万円以下など)でも、消費者を相手にする契約であれば、消費者契約法の規律があります。9条1項1号は、解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項で、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものは、その超える部分が無効になると定めています。10条は、消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。「返金しない」という一律の条項は、解約の時期や提供の状況によらず運営者が全額を取得する形になるため、これらの規定の対象になり得ます。
もっとも、これは「返金しない」を一切書けないという意味ではありません。提供した分の対価、準備にかかった実費、法定の上限の範囲の精算額は、請求できます。つまり、書き方を「返金しない」から「次の算式で精算する」に変えることが、規約の見直しの中心になります。
書き方の例(一般的な例) 解約・返金の条項
中途解約
理由49条1項が認める解除権を、規約で明示する。無効となる条項を置かないことで、会員への説明も一貫する。
入会金の扱い
理由開始前の上限(別表第四の7の項は3万円)を超える留保を避ける。
返金の時期
理由48条7項は速やかな返還を求める。時期と計算の根拠を書面で示すと、後の争いを減らせる。
クーリング・オフの通知方法
理由48条1項・3項。受付方法の絞り込みや到達主義は、会員に不利な特約として無効になり得る。
書き方の例解約条項の例(精算の枠組み)
- 会員は、契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまで、書面または電子メールなどの電磁的記録により、本契約を解除することができる。この解除は、解除の通知を発した時に効力を生ずる。
- 前項の解除があったときは、当社は、損害賠償または違約金を請求せず、すでに提供した役務の対価を請求しない。当社は、会員から受領した金銭を、速やかに返還する。
- 会員は、前条の期間を経過した後も、将来に向かって本契約を解除することができる。この場合、当社は、法令の定める範囲で、提供済みの役務の対価および精算額を請求することができる。
- 前項の精算額の算出方法および返金の時期は、契約書面に記載する。
特定継続的役務提供に当たる契約を前提にした、一般的な書き方の例です。精算額の数字は法令の定めに合わせ、個別の契約で提供開始日や按分方法を書面に記載します。
起きがちなこと
場面別・起きがちなこと
- 契約書面を渡す前に入金を受け、活動を始めさせてしまう。起算日が進まず、会員がいつまでもクーリング・オフを主張できる状態が続く。
- 「サービス開始後の解約は不可」と書いたまま運用する。特定継続的役務提供に当たる契約では、49条7項により無効となり、会員の主張を前に条項が使えなくなる。
- 入会金の名目で、開始前の上限を超える額を、規約上返金しない扱いにしている。上限を超える部分の請求が効力を失い、返還を求められる。
- メールや問い合わせフォーム、メッセージ機能など記録が残る方法で「やめます」と通知されたのに、郵送の書面でないことを理由に受け付けない。電磁的記録による通知も法定の方法であり(48条1項)、拒否した扱いとされるおそれがある。電話で申出を受けたときも、記録が残る方法での通知を案内する。
- 仮交際中・成婚前の解約の精算を、担当者ごとに別の計算で行っている。計算の根拠が書面にないため、会員が納得せず、トラブルが長引く。
- 関連商品(装身具など)を売っているのに、役務の契約とは別の取引として扱い、クーリング・オフの対象から外してしまう。
- 8日を過ぎたあとに「解約したい」と言われたとき、「契約だから無理」と答える。中途解約の権利を妨げる説明が、不実の告知や威迫の問題に発展することがある。
返金を求められたときの考え方は、クーリング・オフ、中途解約、誤認による取消し、規約の返金定めという順序で整理できます。この横断的な整理は、規約トラブルとよくある質問で扱っています。
よくあるご質問
クーリング・オフの8日は、申込書に署名した日から数えますか。
数えません。特商法48条1項は、契約書面を受領した日から起算して8日としています。申込書に署名した日、入金した日、活動を開始した日は起算日ではありません。契約書面が交付されていないとき、または記載に不備があるときは、期間の数え始めが定まらず、会員が後から解除を主張できる場面が出てきます。
クーリング・オフの通知が、8日を過ぎてから運営に届きました。無効ですか。
直ちに無効とはいえません。48条3項は、解除の通知を発した時に効力が生ずるとしています。8日以内に発信されていれば、運営者への到達が8日を過ぎていても有効です。消印、送信日時、通知書面の日付で発信日を確認します。
中途解約のとき、残りの期間の会費を全額請求できますか。
特定継続的役務提供に当たる契約では、請求できる金額に上限があります。提供済みの役務の対価に、解除によって通常生ずる損害の額として政令で定める額を加えた額までです。結婚を希望する者への異性の紹介(別表第四の7の項)では、この損害の額は、2万円または契約残額の20パーセントのいずれか低い額です。残りの期間の会費の全額を請求する条項は、49条7項により会員に不利な特約として無効となります。
活動を始める前に解約された場合、入会金は返さなくてよいですか。
返さなくてよいとは限りません。提供開始前の解約で請求できるのは、契約の締結および履行のために通常要する費用の額として政令で定める額までで、7の項では3万円です。入会金や登録料の名目でこれを超えて受け取っている分は、返還の対象になります。名目でなく実質で判断されるため、何の対価かを契約書面で書き分けておきます。
契約期間が短い、または金額が小さいため特定継続的役務提供に当たらない場合も、返金しなくてよいですか。
一律に返金しないとは書けません。消費者を相手にする契約では、消費者契約法9条1項1号により、解除に伴う違約金などが同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です。10条も、消費者の利益を一方的に害する条項を無効としています。提供した分の対価と実費など、請求できる範囲を算式で書く形に直すのが安全です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、サービスの仕組みや契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 警察庁